「肥前浜宿の町並みをどうしたら残せるか」という問いが生まれたとき、「国の重要伝統的建造物群保存地区(以下、重伝建地区)の選定を受ける」という手法に気づきました。住民だけの取り組みでは限界があり、行政の支援が必要だと考えたのです。しかし、当初は、行政も機運が熟していませんでした。
諦めることなくアプローチを続けた結果、平成九年、文化庁補助事業として鹿島市教育委員会による伝統的建造物群保存対策調査の開始にこぎつけました。地元でも有志が集い、「肥前浜宿町並み保存研究会」を発足させ、「肥前浜宿町並み保存フェスタ」「肥前浜宿伝統的建造物群保存シンポジウム」「酒蔵トラスト」等のイベントを開催していきました。
平成十二年、鹿島市は前年に完成した調査報告書をもとに、「歴史的なまちなみ活性化マスタープラン検討委員会」を発足させます。その下部組織として、地元住民・有識者・行政が一体となってワークグループを結成し、ついに、具体的なまちづくりの議論がスタート。その後、「肥前浜宿町並み保存研究会」は「浜町振興会まちなみ部会」を経て、マスタープラン検討委員会のワークグループを母体に「肥前浜宿水とまちなみの会」となり、「浜宿独自の歴史と生活文化にあふれた活力のある町の実現」をスローガンとして取り組むことになりました。ついに住民・行政・学識者が一体となり、強カな推進力になっていきました。
平成十四年には、鹿島市が「鹿島市肥前浜宿歴史的なまちなみ活性化マスタープラン」を承認。町並み保存に向けて大きく動きはじめます。同年、現在も続く「肥前浜宿花と酒まつり」の記念すべき第一回目を開催。「肥前浜宿スケッチ大会」「街角・酒蔵美術館」「酒蔵コンサート」など、次々とイベントを開催しました。さらに、浜川の整備事業を推進する「浜川河川協議会」を設立。
町並み保存活動の拠点とするべく、前所有者から寄付を受けた「継場」の修復も開始しました。
翌年には、伝統的建造物などの修理、修景に対する助成の枠組みなど、様々な協議を行うための「肥前浜宿まちづくり協議会」を設立。
住民の一体感も高まっていき、大きな目標である「重伝建地区選定」を目指し、地元の合意形成がすすめられていったのです。